ら離れた事、勝手な事をすれば破門されるおそれがある。
従ってその方則を習うだけでもかなりの年数がかかる訳であった。従ってかなりの子供のうちから稽古しなくては到底充分の修業が出来ない事だったらしい。
一人前の心を持った大人となると自分の心が自分に見えて来る。そこで柔順に先生の方則、流派の型など馬鹿々々しい仕事を習得してはいられない。そこで何もわからぬ子供時代においてあらゆる馬鹿々々しい仕事を習練させたものでもある。
ある流派、先生の型、をうけ継ぎ受け継いだ結果生き生きとした画人が西洋でも日本でも出なくなり、世の中が人間の心は、即ち画人の心は、心にもない方向へ方向のわからぬ乗物によって引きずられた結果、生き生きとした画人が西洋でも日本でもすっかり出なくなり世の中が萎《しな》びかかって来たものである。そして十九世紀の終りから二十世紀の初めにおいて非常な勢となって近代の自由な明るい気ままな人間の心を主とした処の画の方則が現れ出したのである。
それは飽き飽きした結果誰れいうとなく現れ出した人間の本音である。
即ち近代の絵の技法は人間の本音から出発しなくては面白くないのである。
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