それでもわれわれはかなりうるさく、あれは美人だとか、拙い面だとか、可愛いとかヴァレンチーノだとか勝手な批評をするのが常である。これも偶然に出来たところの構図を、いいとか悪いとかいって批評するわけである。
人間は、神様が作ったといわれている人間の顔でさえ左様に文句を並べて、少しでもいい構図を求めようとするのである。よい構図は人の心を愉快にし、安心、安定を得さしめるものである。
そんなに人間は、人間の面の批評をするが、まず大体において、人間の構成はよく出来ているものであると私は思う。もし人間をわれわれがはじめて造り出さねばならないものだったら、その組立てについては随分まごつくことだろうと思う。そして案外不便でかつ、可笑しな形のものを作り上げて笑われるかも知れない。
まずいろいろと文句はいうがその目鼻を移動させることはかなりの危険が伴うからやらない方が安全であると私は思う。そして充分自然を愛し、自然に頼ることが安全だと思う。自然は無頓着であるからしたがって千差万別である。一つとして同じものが作られていない。ところで人間のやる仕事は、何に限らず事を一定したがっていけない。今や人の顔はヴァ
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