快であろうかを考えなくてはならない。そこでまずわれわれは自然に向かうと同時に構図を考えなくてはならないのである。
 ところでその無頓着である自然は、また自然と偶然と無頓着とによって、すでに複雑にして美しい無数の構図をこの地球の上に構成しているといっていいと思う。われわれ画家はその自然が構成する構図のすこぶるよろしき一部分を小さな自分の画面へ切り取って頂戴すればいいのである。その切り取り方と画面への配置の方法が問題である。まず初学者としてはこの方法によって画面の構図を定め、しかる後はただ写実であると思う。
 それ以上初学者が構図ばかりを気にかけ、構図のために構図をするようであってはかえって面白くないと思う。一草一木さえ写す技能なしにいたずらに画面の構図ばかりを気に病んで、勝手気ままに自然を組みかえてみたり樹木をかえたりすることは、人間の顔が気に入らないからといって口を目の上へおきかえる位の間違いを起こすおそれがある。
 これは絵の構図ではないが、人間もまた偶然に出来た自然物ではあるが、その生きるという必要上、種々雑多の諸道具類が実に都合よく完全に備わり、格好よく構成されているようである。
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