前、チャップリン出現以前における、パリパテー会社の喜劇俳優、マックスランデーを非常に好んでいた。私はかなり、むさぼる如く彼のフィルムを眺めたものだった。彼の好みは上品で、フランス人で、色男で、そして女に関する上品な仕事がうまかった。その点マンジュに共通した点がある。
 ところが欧洲の大戦によって彼の姿を見失って、チャップリンの飛廻るものこれに代った。
 その後、ふと私はパリでマックスが復活せる力作を見るを得て、私は心の底から笑いを楽しむ事が出来た。最後に、私は日本で、彼の「三笑士」を見たが、間もなく彼は死んでしまった。多分それは自殺だと記憶する。
 とかく生かしておきたい者は死んで行く。

   構図の話

 構図は絵を作る上においてもっとも重大な仕事である。自然を写すことは絵の第一の仕事ではあるけれども、自然そのものはすこぶる偶然なものであり、すこぶる無頓着に配列されているものである。
 そこでその偶然と無頓着な自然全部を、無選択に一枚の限られた画面へ盛ることは出来ない。そこでその現そうとする画面へ、その自然のどれだけを都合よく切り取り、どんな具合に配置すれば形もよく、見てすこぶる愉
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