臓は蛙と同じ昂進を始めて来た、私の眼はグラグラと廻り出した、驚いて私は館から飛び出した事があった。
ともかく私は私の厄介の腑のために随分人に知れない、余分の苦労をつづけている次第であると思う。
蜘蛛
むしがすかぬという言葉がある。何もそんなに厭《いや》がる必要のないものでもどうもむしがすかぬとなると堪《たま》らなく厭になるもので、またむしがすくと、変なものにでも妙に愛着を覚えるものだ。
恋愛などでもそうだ、男は必ず日本一の美人に恋するとは限らない、よそから見ると、何んだ、あんなもの、どこがいいのかと思うがその当事者にとってはとてもなかなか大したもので、おお谷間の姫百合よ、野の花よあなたなしに一日もとか、全く変な讃辞を封筒へ収めて書き送っているから全くむしは厄介《やっかい》だ、たべものなどもむしが大《おおい》に関係するし、美術家の喧嘩《けんか》などは大抵この虫から起るようである。
さてまたこのむしが、本物の虫を嫌うことがある。誰れにでもよくあることだ、私は百足《むかで》が厭だとか蛇が大嫌いとか、なめくじが嫌だとか毛むしあるいはいもむし、といろいろある、これも、よく考えて
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