見ると何も毛虫やいも虫が、人間を食い殺すものでもなし、安全なものであるが、腹の虫が厭がると全く身の毛がよ立つものなのだ。
 私は子供の時から、蜘蛛が大嫌いで、大人となった今もなお、蜘蛛をおそれる程度においては、子供の時代と少しの変化もない、これはおそらく、私にとっては一生涯の苦の種であろう。
 蜘蛛といっても、けし粒ぐらいの奴から、大きいのは直径五、六寸あるのがある、笑談じゃない、それは気の迷いだろうと笑う人があるかも知れないが、事実あるのだからいたし方がない。しかしこの大蜘蛛は関東に少く関西に多いのだ。それで東京の人には説明しても了解のゆかぬ人が多い。見たことがないのだから、これをただ一目でも見て置いてくれないと私に同情が出来ないであろう。
 この蜘蛛は決して巣をかけないで、天井や壁をのそりのそりと這《は》い廻るのだ、今私は這い廻るとここへ書いたがただこう書いただけでも、このペンの先から厭な電気が私の神経の中枢へ伝わるのを感ずるくらい、むしが好かないのである。
 ところでこのおそるべく厭な大蜘蛛が現われた時の、私の家庭はそれこそ殺気立つのだ、子供の時分は、さア早く来てくれ、蜘蛛や蜘蛛
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