はその親切を一生忘れ得ない。
以来私は絵の道具を担《かつ》いで坂路を登ることを大変|厭《いや》がるようになった、坂路を見ると目がくらむ心地が今もなおするのである。
私は一人で風景写生に出ることを好まなくなったのはどうもその時以来らしい、画家の健康と、モティフとの関係は随分密接であると思う。大きなトワルを持って幾里の道を往復するという仕事は私にとっては先ず絶望の事に属するのである、従って私は静物と人物を主として描きたがる、これはモティフが向うから私の画室へ毎朝訪れてくれるから都合がいい、多少腹が痛くても仕事は出来るが風景は向うから電車に乗っては来てくれない、風景画家には健康と、マメマメしい事が随分必要である事と思う。
それから間もなく、やはり胃のふくれている或日の事、私は活動写真を見に入った、すると蛙の心臓へアルコールを灌《そそ》ぐ実写が写し出されたのであった、蛙の心臓が大写しになるのだ、ピクリピクリと動いている、ああ動いているなと思う瞬間、アルコールの一滴がその心臓へ灌がれたのだ、すると、そのピクリピクリの活動が、とても猛烈を極《きわ》めて来たのだ、おやおやと思うと同時に私の心
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