は情《なさけ》ないものだ、私なども、自分の胃病を軽蔑《けいべつ》されたりすると、多少|癪《しゃく》に障《さわ》ることがある。おれのはそんなくだらないケチな胃病とはちがうんだと威張って見たくなることがある、くだらないことだ。
私なども子供の時分は胃の事など考えなかった、自分の身体をば水枕か何かのように考えていたものだ。私の両親は食事しながら笑ったりお饒《しゃ》べりなどすると、これ、あばら[#「あばら」に傍点]へ御飯が引掛《ひっかか》りますといって叱《しか》った事を私は今に覚えている。
何んでもその水枕の周囲に提燈《ちょうちん》あるいは鳥|籠《かご》のような竹か何かの骨がめぐらされているものと考えていた、そこへ飯粒が引掛ると咳《せき》が出たり、くしゃみ[#「くしゃみ」に傍点]が出たりするのかと思っていた。
兵隊さんなどで、胃病に悩むなどいう人はあまりないと思うが、従って兵隊さんは腹の中を随分簡単に考えているらしい、即ち兵隊さんの仲間では第一ボタンまで食ったという言葉があるそうだ、咽喉《のど》から下全部を、一つの袋か壜《びん》の類と見なした言葉だと思う、そしてボタンはその度盛《ども》
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