ども神通力を得ると毛の色も金色と変じて金毛九尾となる。芸術家もそこまで行かなければ駄目だ。役者でも、落語家でも、講談師でも、政治家でも、何でもそうだ。堂に入った達人になると皆「ぬし」と変化するようだ。芸術家の終点は「ぬし」ということにきまったようだ。
[#地から1字上げ](「中央美術」大正十五年一月)

   七月

 冬は陽で夏は陰に当ると老人はいう、なるほど幽霊や人魂《ひとだま》が出るのは、考えて見ると夏に多いようだ、幽霊の綿入れを着て、どてらを被《かぶ》った奴などはあまり絵でも、見た事はないように思う。
 芝居などもお岩だとか、乳房榎《ちぶさえのき》だとかいうものは、冬向きあまりやらない、やはり真夏の涼み芝居という奴だ。
 しかし私は今ここで怪談をやるのではない、ちょっと怪談も一席やって見たいのだが、それはまた今度の楽しみとしてとって置こう。
 私は昔しからかなり毛嫌《けぎらい》をよくしたもので、私が美校在学当時なども、かなり友人たちを毛嫌したものだった、殊《こと》に大阪人を非常に厭《いや》がったものであった、東京から暑中休暇で帰郷する時など、汽車が逢坂山《おうさかやま》のトンネ
前へ 次へ
全166ページ中77ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング