って今の世の芸術はもっぱら複雑な嫌味で成り立っている時代かも知れない。
もう今日の場合ではいかに竹林の七賢人が賢くて嫌味のない人種だからとはいえども、出る幕ではないということになっている。生殖不能だなどいっている奴は早速人生の失業者となって橋の下で死んで行くより外ないだろう。芸術は目下戦争なんだ。当今芝居でも剣劇というのが何よりも流行するというのももっともなことだと思う。
戦争の時代では嫌味もくそもいっていられない。そこで何しろ事に当たるものは若い者に限るとなっている。壮丁を必要とするのだ。だから今の芸術は画壇でも何でも若いものが、その中心となって働いているわけだ。
それは無茶にでもやって行けるのだ。ところが悲しいことには西洋人の如く、本当の精力とか体力が何といっても足りないのだから、すぐ早老が押し寄せてくる。生殖、繁殖、進行、猛烈が長く続かないのだ、気ばかりあせってもすぐ早漏だ。これが長い年月嫌味を排斥して棺桶を理想としてきた罰かも知れない。日本ではルノアールの如くあのよぼよぼになるまで、あんなに美しい裸婦の描ける人が一人だっていないのだから情けない。嫌味がなさ過ぎるではないか
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