を贈呈に及ぶかも知れないと思う、それはまったく日本としては珍しいことなのだから。
ところで昔は西洋はこう、東洋はこうとちゃんと分限がきまっていたのだからよかったけれども、現代となって西洋と東洋とが入り交ってしまって、すこぶるややこしくなってしまった。芝居の芸者が嫌味な奴に惚れ出して来たのだ。金と自由とさえ与えてくれれば何でもいいわ、という怖ろしい芸者が飛び出して来たのだ。
今日の日本人はまったく静かにしていていいのか、元気をつけていいものか、恋愛をしようか、やめておこうか、山へ逃げ込んでみたり、ちょっと現れてみたり、出しゃばってみたりへこんでみたり、種々雑多の相を現して来たので、その発露するところの嫌味も尋常一様の嫌味でなくなって、とてもこんがらがって来た、それはちょうど白と黒の如く相性の悪い二つの性を一つの心に持ったような味を発散するようになって来た。
今の若い芸術家、映画俳優、女学生、中学生、あらゆる何でもが相性の悪い二つの心を持って悩んでいるのだ。この悩ましくややこしいところから無数の嫌味が、ラジオの波の如く、この世の空気に一杯になって拡がって来たといってもいい位だ。したが
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