も一つ表現方法として珍らしいのは、ある種類の風景画はガラスを幾枚も重ねて、一枚の絵を作っているのもあります、即ち近くにある物体、例えば岩や松は看者《みるもの》に一番近い手前のガラスへ描かれ、中景に当る茶店とか人家、中景の雑木《ぞうき》などは、中間のガラスへ、遠景の空と山と滝といったものは一番奥のガラスへ描いてあります、なるほど、重ねて眺めると、物体は本当に浮き出して見えるわけであります、これなどはガラスの透明を応用して実感を現わす思いつきとしては、頗る愛嬌《あいきょう》のあるものだと思いますが、決して品のいいものではありません。
 先ず日本出来のものでは私の考えでは、風景よりも末流の浮世絵風に描かれた女の風俗、肖像といったものに面白いものが多いと思います、これ等も都会ではだんだんなくなりつつありますが、田舎《いなか》へ行けばうるさいほど現在でも残っている処のものであります。
 支那のガラス絵では、私の今まで見たものには二種類あるようです、一つは純粋の支那らしいもので他の一つは西洋模倣のものであります。
 純粋の支那らしいものといえばその題材なども主として、道釈《どうしゃく》人物、花鳥
前へ 次へ
全166ページ中50ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング