額《かけがく》として愛用されたり、品の悪い柱がけとして用いられたり、商家の絵看板に応用されたりなどしたのです、だから今でもこの種類のものを探せばいくらでも出て来ます、決して画品のいいものではありません、芸術としては価値|甚《はなは》だ低いものですが、粗製濫造から来る偶然の省略法や単化と、ガラスの味とが入交《いりまじ》ってまた捨《すて》がたい味を作っているものがあるのです。
 先《ま》ず日本製のもので一番多いのは、風呂屋向きのザンギリ[#「ザンギリ」に傍点]のイナセ[#「イナセ」に傍点]な男女が豆絞りの手拭《てぬぐ》いなど肩にかけた肖像画や諸国名勝などであります、あるいは長崎あたりへ来た黒船の図なども多いのです。
 名勝風景などは、その絵の中の岩とか石畳《いしだた》みとかの部分へガラスの裏面から青貝が貼《は》りつけてあります、凝り過ぎたものであります、あるいは風景中の点景人物などは当時の芸者の写真をば切り抜いて、それに彩色を施して、そのまま貼りつけてあるのがあります、表現法としては真《まこ》とに思い切った不精《ぶしょう》なやり方で、近頃の二科あたりの連中の仕事にも似て面白いと思います。

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