たようでありますから、も早やかなり調べている人もあるかも知れません。
 ともかく、私がガラス絵に興味を持ち出したのは随分古く、もう十四、五年も以前の事であります、偶然大阪の平野《ひらの》町の夜店の古道具屋で、初めてガラス絵というものを買って見たのでした、それまでは散髪屋とか風呂《ふろ》屋ではよく見かけたものですが、別段欲しいとは思わなかったが、変な興味はもっていたのでした、どうも普通の絵とは違った下品ではあるが何か吸込まれるような色調が妙に私の気にかかってならないのでした、それは高等な音楽、何々シンフォニーではなく、夜店の闇《やみ》に響く艶歌師《えんかし》のヴァイオリンといった種類のもので、下等ではあるが、妙に心に沁《し》み込む処のものでした。
 勿論安い事は驚くべきものでした、家へ持って帰って眺《なが》めて見るになかなか味があるのです、その絵は人形を抱いた娘の肖像で、錦絵《にしきえ》としてはかなり末期の画風のものでありましたが、非常に簡単な手法が一種の強さを持っているのでした。これが病みつきで私はどうもガラス絵が気にかかり出しました、そのうち色々の風景画や、人物画なども集めて見たりし
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