なるか私はよく知らないのであります。
ガラス絵の話
一
油絵はトワアルへあるいは板へ、水彩は紙へ描くものであります、ところでガラス絵はガラスへ描くものであります。しかしながら、ガラスの上へただ描くだけならば、板の上や紙の上へ描くのと別段変りのある訳ではありませんが、ガラス絵の特色は、ガラスの上へ描くのではあるがその絵の効果、即ち答は、ガラスの裏面へ現われて行くのであります。即ち裏から描いて表へ現わすという技法であります。それは丁度|吃又《どもまた》の芝居の如きものでしょう。あの又平《またへい》が、一生懸命になって手水鉢《ちょうずばち》へ裃《かみしも》をつけた自画像を描きます。あの手水鉢はガラスではありませんが、又平の誠が通じて石の裏から表へ、自画像が抜け出すのであります。
ガラス絵は、あの調子で行くものであって、即ち手水鉢の代りに、ガラスを使用するものだと思えばよいのです、そんな、ヤヤコシイ技術即ち工芸的な手法であるがために、画家でこれを試みるものがなかったのであります。早くいえば職人の仕事であります、従って製作品には工芸品として作られたものが多いのです、支那
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