《とも》っているだけでした、そして彼女の草鞋の横顔を、かすかに照しているのでした。
私は少し心細くなったので、もう写生などやめにして逃げて帰ろうかとも思いながらランプの火を眺めていました、すると草鞋の裏が私の前へやって来ました、婆さんは自身の身の上について何か沢山|饒舌《しゃべ》った末、あんたはほんまにきゃしゃ[#「きゃしゃ」に傍点]なたちやな、あんまり勉強すると肩が凝《こ》るやろといいました、私は全く肩を凝らす性分なのですから、はあ、と答えると、わしがちょっと揉《も》んでやろというのです、ランプの影からもう細い手が二本出ています。大体この家には私とこの草鞋の裏と二人きりしかいないのですから、助けてくれと叫んでも誰一人出てくれるものはありません、どうも都合が悪いと思いましたが逃げる訳にも行かず、私は丹田《たんでん》に力を込めて目をつぶって揉んでもらいましたが、彼女の毒気が肩先きから沁《し》み渡るのを覚えました。
それから婆さんは、毎夜私の部屋へ遊びに来まして毒気を発散しながら親切にしてくれるのであります。この親切は老年の一人身から僕を小供と思ってしてくれる親切だと解釈する事に私は大
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