白粉《おしろい》がかたまっているようでした、それから頭の構造が頗るややこしいのです。先ず額に一本の針金が渡されていて、情けない毛髪がそれから生じているのです、その絶頂には小さな丸髷《まるまげ》が一つ乗っているのでした、その髪の下は完全な禿頭《はげあたま》で、その禿頭にはくろんぼ[#「くろんぼ」に傍点]がベタベタと瘡蓋《かさぶた》の如く一面に塗られていて、到底じっとは見ていられない穢《きたな》さでありました。
 あれが妖怪狐狸の類ならば、こんな下手《へた》な化け方はしないでしょうが、そこが人間の情けなさから頗る深酷に手古摺《てこず》っているのでありました。私は婆さんが側へ来ると何か異様の毒気を感じるのでした。
 しかしその座敷が閑静でいいのと、紹介してくれた人への義理もある処から、まあ不気味な婆さん位いは、我《が》まんする事にしました。
 ところがまたこの家には電燈が一つもないのです、婆さんは古ぼけたランプを一つよそから借りて来てくれました、すると一体婆さん自身はどうしているのかと思って見ますと、庭を隔てた母屋《おもや》の彼女の部屋には何んと、唯一つのカンテラ[#「カンテラ」に傍点]が点
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