と思いつつも、多少きまり悪さを感じていたのであるがこの日は思切って木戸銭を払った、なお中銭《なかせん》という無意味な金まで取られて穢《きたな》い幕をくぐると、中には丁度洗湯位の浴槽《よくそう》に濁った水が溜《たま》っているのだった、わずかに五、六人の見物は黙って暗い電燈の下でその汚水を眺めていた、私もそれを眺めていたわけである、やがて印半纏《しるしばんてん》を着た男が何かガンガンとたたいて、さアこれより海女の飛込《とびこみ》と号令した、すると穢《きたな》い女が二、三人次の部屋から現れてその汚水の中へ飛び込んだものだ、私は動物園を考えた。
 見物人が一銭を水中へ投げると海女は巧《たくみ》に拾うのだ、その時海女は倒立《さかだ》ちとなって汚水から二本の青ざめた足を突き出した、その足の裏は萎《しな》びて、うすっぺらで不気味で、青くて、堅くて動物的で、実用で、即ち人間の立つ台の裏という感じなのであった。
 私は、女の足の裏は今少し優美なものかと思っていたのだ、ところが全く厭《いや》な形相《ぎょうそう》のものであった、女の足の裏がすべてこれだとすると考えものだとさえ思った、しかし世の美しい人たちの
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