足の裏は決してかかる浅間《あさま》しい形相はしていまいと考え直しても見たが、何はともあれ、私は一生涯忘れ得ぬ厭な感銘を足の裏から受けて小屋を飛び出した。
 出てからも一度看板を見直して見たが看板には足の裏は描いていなかった。

 私は以来、足の裏が気にかかって仕方がない、美しい女を見ても、すぐ足の裏を思い出す、洋装の裾から出た二本の立派な足のその裏を考える。坐せる婦人を見るとその足を覗《のぞ》いて見る。私はモデルに寝たポーズをさせる時|屡次《しばしば》その足の裏を見るが、どうも黒く汚れていたりして海士《あま》の形相を打ち消してくれそうなものに出会わない、その上太い足の指がお互いに開いていて、さもこの十四、五貫の重量は私が支《ささ》えているのだといった表情をしているのが情ない。
 私はどうかして形相よき足の裏を拝見してあの不愉快な感銘を打消したいものであると常に思っている。
 ところが最近は紀州大崎へ出かけた、小船にのって弁天島へ渡ろうとして、偶然にも再び二人の海女を見た、そして私は水面に突き出ている四本の足を眺め、四つの足の裏を見て、昔の記憶を再び新《あらた》にして随分厭だった。

 
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