るので大いに幸いであった。
ところで私は欄干へもたれて、向かい側に並ぶ家々を見渡して愕いたのだ。その家々というのは皆女郎屋なのである。その上狭い町だからその女郎屋の二階座敷は私の座敷から約一○メートル位以上離れていないのだ。そして何もかもがことごとく見えるのだ。私は暑いのに一晩中欄干へも出られず、ふすまに面して憂鬱であった。その翌日も暴風雨はやまない。蒸暑い一日を繰り返し再びふすまの絵を眺めて一夜を送った。
その翌日、太陽の光を見るや否や、私は停車場へかけつけて、何はともあれ大阪までの切符を買ってしまったのであった。
汽車に乗ってよく考えてみると、天気は素晴らしく美しいのだ。瀬戸内海の波は何ともいえず素晴らしく輝いているのだ。それに私は大阪行きの汽車に乗り込んでいるのだから馬鹿げているではないかと思ったことがある。
夏の水難
女難は、必ずしも艶《つや》っぽいものとは限らないそうだ。電車の中で、ちょっと婆さんに足を踏まれても、女難の一つだという事を聞いた、あるいはそうかも知れないと思う。
私には水難の相があると、昔、或る人相見がいったのを覚えている。水難といっても、必
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