外へ引移った。画家というものは、いつも自然を友とするように思われるのが自然だが、町の中で生れて、町の中ばかりにいた私は殆《ほと》んど木の名も草の名も、魚の名も虫の名も知らずにいた。何か総体として樹木というものだけは知っていた、そしてその代表的な松とか梅、桜、位《くら》いは確かに知っていた、魚は鯛《たい》、まぐろを知っている位いであった。
従ってつい風景とか自然に対する親しみが比較的|薄《うす》かった、私はあまり人気《ひとけ》のない山奥などへ出かけると不安で堪《たま》らなくなるのである。
そんな訳から私は今まで地球の上には人間だけが威張っているのだとばかり思い込んでいた、その他の万物はいる事は噂《うわさ》として聞いていただけのものに過ぎなかった。
ところが初めて私は毎日池を覗《のぞ》いて見たり草原を探って見たりして驚いた、先ず例えば一尺平方の地面の上に、これはまた無数の生物がうようよしているのであった。ちょっとした水|溜《たま》りの中に、何か知ら不思議な奴が充満しているといっていい位い右往左往しているのだ、目に見える奴だけがこれだから、もし細菌といった奴なら、それこそ到底地球上の人
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