増した新春
私の生れた家は古めかしく、暗く、戸や柱は黒光りの光沢があった。神棚が店の間に二つ、仲の間に大きいのが一つ、庭に二つ、薬屋だったからその製造場に一つ、前栽《せんざい》に稲荷《いなり》様が一つ、仏間に仏壇が一つ、合計すると相当の数に上った。
その神様の種類からいえば、先ず店の間の天照皇太神宮《てんしょうこうたいじんぐう》を初めとし、不動明王《ふどうみょうおう》、戸隠《とがくし》神社、天満宮《てんまんぐう》、戎《えびす》、大黒《だいこく》、金比羅《こんぴら》、三宝荒神《さんぼうこうじん》、神農《しんのう》様、弁財天、布袋《ほてい》、稲荷様等、八百万《やおよろず》の神々たちが存在された。朝夕に燈明と、水と、小豆《あずき》と、洗米《あらいごめ》を供えてまわるのが私の役目とされていた。だから今でも私は燧石《ひうちいし》から火を得る術《すべ》は心得ている。
神様の中には金箔の塗られた大小幾つかの怪しげな形のものまで交っていた。私はそっと取り出して達磨《だるま》の如くころがして、起上るのを楽しんで叱《しか》られたこともあった。
朝と晩とには、父はこの神棚を必ず拝んで廻るのだが、そ
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