軍艦が波を走る光景、U何号がテレスコープを波に沈めんとする刹那《せつな》、その発射、黒い煙幕のグロテスク、巡洋艦のスピード、殊《こと》に戦闘艦においては、近代の陸奥《むつ》の如く、そのマストが奇怪なる形に積まれ、煙突は斜めに捻《ね》じられ、平坦《へいたん》にして長き胴体が波を破って進む形、それらの集合せる艦隊のレヴュー風の行進、大観艦式の壮大なる風景、それらは全日本の若き者どもを狂喜せしめずにはおかないはずである。
絵を描かぬ美術家、趣味から生れた建築やいくさぶね、切れない日本刀、不感症の女等は邪魔にばかりなる存在である。そして画家は、自然の草木、人体、機械、何が何んであろうとも、美しき存在は悉く描いて見たいという本能を持っている。現代の絵画のあるものは機械をモチーフとするに至ったことは甚だ当然であり、なおもっと機械が芸術の様式を左右することになるであろう。
街頭漫筆
私はあらゆる交通機関が持つ形の上の美しさを常に愛している。近代の機関車の複雑とその滑かな動きに私はいつも見惚《みと》れている。その他電車、自動車、飛行機、軍艦等、悉《ことごと》く人間が必要からのみ造り上げた
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