た。今一個のものも他の電球へ取りつけた。それも直ちに点火した。そこで二〇銭を彼に与えると、彼は礼を述べて立ち去った。
それから三〇分もたたぬうちに修繕してもらった球は二つとも殆ど前後して消えてしまった。何のことだ、どうせこんなことだろうと思って以前の電球を元の如く取り付けてみるとその球の線も二つながら切れていて光らないのだ。すなわちそこには四個の切れた古球がずらり並んでしまった。
ようやくなるほど欺されたということがうすぼんやりと判って来た。
結局、彼は二〇銭と私の家の新しい電球二個[#「電球二個」は底本では「電球」]をポケットへねじ込んで、切れた球をその代わり暗がりまぎれに並べて帰ってくれたわけだった。それでとうとうまた二個の電球を買いに走らねばならなかった。
しかし考えてみると、当方の間抜けさと彼の手品の成功は、寄席の手品で[#「手品で」は底本では「手品でも」]ちょっと舞台へ呼び上げられて縄の尖端を持たされている位の余情はあった。
勇しき構成美
近代芸術の画因《モチーフ》として機械というものが現れた。機械のなかった世界にあっては、人は自然界の万物のみを愛し、画家
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