りとした相貌で、性格は英雄ふうと見えるがためか、太刀を揮って鬼の片腕のために奮闘などしていると安心して見ていられるが、師直となっていたものだから、豪快善良な師直が出来た。とても判官位を相手にケチな金儲けなどする人物とも見えず、その上相手の判官は大阪の福助というもの静かなむしろ静物に近い性格者であった。好漢師直でありしかも判官は腹立てず、しかしながら筋書きもあることだから、ともかく刀は抜かずにはいなかった。
さて電光輝く桜の仲之町、多少のジャズとレヴューの光景だ。ここでは幸四郎の人相は大いに役に立った。紫の鉢巻したる助六だ。そこで弱ったのが揚巻太夫の静物福助だから一人ではしゃぐ助六を尻目にかけて、この不良青年を目殺してしまった。といったふうの役者の人相と役とのちぐはぐは不思議に変な気のするものである。
まずわれわれ画家は作品とともに並んで本人出演の必要がないので、幸いにもどんな素顔や人相を呈していたって構わないわけではなはだ自由だ。しかし中には隠しておくにはもったいない位の好男子もあることだから、これらを絵画愛好の若き女性達へ広くお目にかけ得ないことは残念な職業である。まず個展でも開
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