し左様な顔に限ってお座敷向きだろうと想像する。

 名人名優でなくとも昔は好男子が直ちに役者の第一条件とされ、好男子でさえあれば下手糞でも人気は大変なものだったが、今もなお左様なこともあるにはあるが、しかしだんだん近代になって人間の人相性格のはっきりしたものが役者となってもっとも有効となりつつあるように思う。ことに映画においてはバンクロフト、ストロハイム、ヤニングスとかボウエルとか草人とかあるいは端役の老若にも性格そのものの顔を集めることは注意している如くである。また愛好家の女性達もまただんだん治兵衛好みからバンクロフトへ好意を転じつつある。ともかくももう卵に目鼻という顔は流行《はや》らなくなってしまった。
 人形芝居では、人相というものを初めからその役々の性状にしたがって適当に作ってあるから由良之助が軽卒な顔であったりすることはないが、人間の役者ではその人相と性格が役の邪魔をすることがかなりある。この間も私は久しぶりで忠臣蔵を見た。大阪のことだから役者不足の東西混合劇だった。したがって何かの余興に見る名題芝居を思わせるものがあった。
 幸四郎という人の顔は、はなはだ明快で大柄でのんび
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