供と、家族とともに太陽の下で朗らかに笑いたい。
[#地から1字上げ](「大阪朝日新聞」昭和五年八月)

   国産玩具の自動車

 玩具屋のショーウィンドに、かなり立派に見えるところの玩具の自動車が並べてあった。私の子供は、それを以前から買ってくれ買ってくれといっていたので、とうとう買ってやった。子供は大喜びで家へ帰ると、すぐさま箱からとり出してぜんまいをねじろうとすると、その肝心のぜんまいが駄目になっているのであった。早速よいのと取りかえにやったところが、今度はおよそ半日ばかりたつと車の心棒がぬけてしまった。そのぬけた個所をよく見るに、なるほどぬけるのが本当であると思える位ぞんざいな細工がしてあるのだった。ところで半日も経過しておまけに二度までも取りかえに行くことは随分おかしな話で、玩具屋も承知しまいと思ったからついそのままにしてしまった。子供の悦びは半日で消滅したわけだ。
 こんなことは日本製の玩具には常にあることだから珍しくはないが、まったく子供のためにも可憐そうでならない。せっかく楽しんで持って帰って、さて遊ぼうとするとすぐさま用をなさなくなるのである。
 ところで、この自動車
前へ 次へ
全152ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング