子供ぐらい動くものに興味を持つものはない。球の運動、機関車の進行、軍艦の煙、等々。そして現代では新鮮にしてもっとも動くところの芸術は活動写真である。ところがどうだろう、この明るく新鮮な、動く芸術の世界は学生と子供からまったく閉鎖されているのだ。そして子供には内密で大人ばかりで雑談に耽り、猥談に遊んでいる。
私はキートン、チャップリン、ロイドあるいはコンクリンの喜劇あるいは実写ものニュースの類、山岳、飛行機については子供とともに朗らかに笑いあるいは説明し、ともに感心してみたりも出来る。だがあのスクリーン一杯のクローズアップの人相の悪い不愉快な男が髪を乱して刀を抜いて大殺人をやるところはいかにも自分の子供とともに悦んで見ているわけにはいかない。これこそ、心ある者は子供の世界から閉鎖するのが当然である。それにしてもチャップリンが持てる童心やキートンの童心に私はいつも感服している。
まったくせめて一つや二つの子供に対する完全な常設館と、映画があってもいいと思う。光と、運動と、科学を極端に生かすことの出来る新鮮な芸術を、子供から遠ざけていることはまったく残念で不幸なことだ。私は何にしても子
前へ
次へ
全152ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング