季節によって床の間が変化する如く季節による年中行事があることは、その行事によって季節を想《おも》わしめ、その季節が行事を想わせるところに、太陽の動きと、天地の変化と、人間の生活との間に、甚だ親密なる交際を構成するものである。

   陽の下で笑う

 男ばかりの集まった時の雑談は女に聞かせ難いことがあり、大人ばかりの雑談は子供に内密で有りがちである。話題はつい人生の裏道へ行きたがる。
 私が子供であった時の記憶によっても、つい何心なく大人の部屋へ走り込んでみると、急に皆の者が慌てて話を中絶して白ばくれてしまったということはしばしばある。そしてことごとくの眼が私を睨んで、うるさいちんぴら、早く寝てしまえといったふうのことを語る。子供ながらも何のことだかわからないが、その眼の意味と、その場の空白の不愉快は直ちに了解が出来る。そしてその内密の世界の暗い圧迫さえも私は感じることが出来た。
 しかしながらかように子供を避ける集団はまだ心につつしみを持つ行儀のよい方だが、もすこし下卑てくると、決して子供のために話題を転換することがない。彼らはその子供にさえもわかるように、親切に説明してくれ
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