方が、大変巴里で落ちつける様になった。もう何もせずにでも一日ゴタゴタと、丁度八幡筋の二階で住んでいる如く、ぼんやりと暮す事が出来る様になった。そして夜は写真の現像などしたり、焼付けたりして時間を消している。此の写真のレンズは、小さいが頗るいいレンズだよ。此の写真を撮った日などは、それは暗い日だったが、十分の一のシャッターで、こんなによくとれているんだよ。
 ドイツでは帰りぎわになってから写真機を手に入れたので、あまり沢山ウツせなかった。巴里でうつしたらボツボツと送るよ。今日はとも角今迄のを封入して送る。
 きのうは、サロンドートンヌを見たよ、中村と一ショに。あまりくだらない絵をどっさり見たので、絵そのものにあいそがつきて、絵かきがやめたくなったよ。三十分程で逃げ出した。
 当分のうち巴里に居る。もう巴里を南へ出発すれば、再び巴里へは帰らないつもりだからよく巴里を見て置く。そして買物したりなどする。古道具屋をあさる。
 いよいよ巴里を去る事を思うと、さすがにおしい気がするよ。
 買物万端整うたら、カンヌの方へ行く。正宗得三郎氏が、僕と同宿になった。正宗君の紹介で、カンヌへ行く事になる。

前へ 次へ
全152ページ中132ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング