ト気が付くと、アア俺は今紅海を走っている最中やのに、こんな処へ帰ってはさア大変だ、早く船へ帰ろうと思ったら、又旅券の下附願いからやり直さねばならぬ事になって、これはなんじゃと思うて、フト夢からさめたら、クライストのベッドに居ったので、おかしい様な、ヤレヤレとした様な、妙な気もちになったよ。

 九月十四日 地中海にて クライスト丸より
 三日してマルセーイユへつけば、一泊の後ちパリへ入る。
 ポートセイドではよほど欧洲らしい気分になって来た。夜のメンストリートの道側のカフェーの椅子に腰かけて、散歩する色々な人種を眺めていると、カフェーのオーケストラが聞えてくるし、路バタの熱帯らしい樹木が垂れ下がって、実にいい気もちだ。
 早く帰って、も一度今度は重子も泰公もつれて来てやろうかと云う心もちがしている。それはいいんだからね。
 此の辺はエジプトの黒人と、アラビヤ人と、欧洲人とのごっちゃまぜだから面白い。黒い人は皆赤いトルコ帽を被っている。
 何れマルセーイユへつけば、又手紙をかく事にする。
 もう船の中では、皆上陸の準備で忙がしい。
 熱いうちは、デッキが賑やかだったが、もうこのごろのデッ
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