陶酔に飽き足らず、大いに画業の本格を究めようとする風潮も若き人達の間に現れ、勢い大作に向かって画家を動かしつつあるために画面の拡大され来たったことも目立つところのことである。
それから今年は有島生馬氏の滞欧作品と津田青楓氏の特別出品があり、その他川口軌外、福沢一郎両氏等の近代フランスの尖端的影響に動きつつある人達の特別出品があり、これなどは若き人達へ相当の刺激を与えるものであるかも知れないと思う。
[#地から1字上げ](「大阪朝日新聞」昭和四年十一月)
欧洲からの手紙
――愛妻重子へあてて――
一九二一年八月七日 支那上海に於て
門司を出て、お母さんや福本さんやと別れてから、大分に船のキソクや時間のウルササになれ、手紙をかく余裕も出来て来た。
昨夜は九州の五島列島の灯を左舷に見た。日本の最南端の灯台が明滅しているのが一寸心細いような、愉快な心地がした。海は静かだ。二等のスモーキングルームで林君や、硲、長島君などと夜更けまでしゃべって、一寸湯に入って寝た。よく寝た、由利さんから出発の際何かくれた品ものがある。何んだかわからなかったが、寝ていると、その品物の中か
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