あるがために風景がよく見えるという位の家が殆《ほと》んどない。これは何も芦屋に限らない、現代日本の近郊の大部分は同じ事ではあるが。
 それにつけても羨《うらや》ましいのはモンテカルロ辺《あた》りの古風な石造の家や別荘の積み重なりの美しき立体感である。マッチの捨て場所のない清潔な道路である。
 家ばかりを幾度描いても描き切れない豊富な画材が到る処に転がっているのだ。
 でも私は、あまりいい天気の日に、何かたまらなくなって、カンヴァスを携げて山手の方へモチーフをあさりに行く。そしてその度びに何か腹を立て、へとへととなって疲れて帰ってくる事が多いようである。
 その腹立ちを直すために、神戸へ出かけて、ユーハイムの菓子でコーヒーをのみ、南京街で新鮮な野菜を求めて帰ってくる。
 私の絵に静物や裸女が多くなるのもやむをえない影響であるだろう。

 私の家を門のそとから眺めて見ると、温室があり花壇があり様々の草花が咲き乱れている。その少し奥にはガレージがあり、二台のオートバイが並んでいる。それから小さな亭座敷《ちんざしき》があり、松の並木があって、私の家の玄関が見えその奥づまりに画室がある、という極
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