ものは日本一を要求する。日本一の風景はどこですかと訊く。日本三景何々八景というものを考えてみたりする。美人投票一等当選というものを嫁にほしいといって両親を困らせる息子もある。
 世界一の音楽家を定めようとするし、世界一の絵描きさんは誰ですかと訊く人も多い。これでは世の中では、女は常にただ一人だけが看板として要求される筈である。
 その結果かも知れないが、ショーウィンドの飾り人形の顔を見ると、皆均一の顔である。そしてその顔は、昔一番有名であってかつ面白味のなかった名妓何々の顔をそのまま拝借してあるようだ。
 それでは日本人は皆芸妓何々に似た女と結婚しているかというと、なかなかそうでない。あらゆる変化あるものを同伴している。
 しかしながら無理の通せる財産家の極道息子が結婚する時などはしばしばあれでないこれでない、やはり何となくあの妓に似ているという点でようやく承知したりする。要するに、名妓何々のイミタシオンを買ってしまう。
 現代ではすでに名妓は廃れてしまいその代り活動女優とか西洋もののフィルムの中にその第一番を求めようとするようだ。
 ある素人の美術通などという男の説によると、日本の女
前へ 次へ
全237ページ中46ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング