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この間、私が見た芝居では、天王寺屋兵助という盲目の男が五十両の金|故《ゆえ》に妻を奪われ、自分は殺され、まだその他にも人死にの惨事が出来上《できあがっ》たようだった。全く人間の生命も金に見積るとセッターや、セファード、テリヤよりも案外安値なものである。
絵描き貧乏と金言にもある通り、その一生といってもこれは主として私の一生の事だが、それを金に換算すると随分安い方に属していると思う。
酒は飲めず、遊蕩《ゆうとう》の志は備わっているが体力微弱である私は、先ず幸福に対する費用といえば、すこぶる僅少《きんしょう》で足りる訳である。たとえば散歩の時カフェー代と多少のタクシと活動写真観覧費とレストウランと定食代位のものかと考える。職業柄の材料費というものは案外素人の考えるほどにはかからぬものである。
またさように資本をこの方面につぎ込んで見た処で、その多量な生産を誰れが待っているという訳のものでは更にない。徒《いたず》らに押入れの狭さを感じるわけである。
先ず一年のうちに四、五枚の点数がそろえば秋の二科へ出すだけの事である。そして仲間うちの者たちのために、いいとか悪いと
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