らないものだったが、何かしら絵がうまくなるまじないだから位のつもりで私も相当描いてみたことはあるが、正直なところ一度も面白いものだと思ったことは更になかった。
 要するに静物画といっても、林檎ばかり描くべきものでもないので、室内にあるすべてのものあらゆるものが絵の題材として選ばれていいのである。

 静物画は、自然さからいえばよほど人工的なものである。一つの画面を作るために風景にあっては樹木を構図上の関係からいろいろと並べてみたり、山を移動させたりすることは出来ない。まずありのままの形において写し、構図は人間の方で多少動いてよろしき位置を定めるのであるが、静物にあっては例えば卓上菜果の図を作るに、それらの題材は自由に画家の希望通り並べかえ取りかえることが出来る。その代りなまじっか、自由が利くところにかえって構図上のむつかしさ[#「むつかしさ」は底本では「むずかしさ」]が起こってくる。ああでもなく、こうでもなく、結局あまり細工をやり過ぎて妙な、嫌味な、不自然なごたごたしたものを製造してしまう。
 構図は取捨選択が勝手次第であるが題材はその範囲はなはだ狭いものである。風景画の如く広く自然界
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