であるが、それらの題材のみを描いた絵に対して特別な名称、例えば山水画、花鳥画といったようなものがなかったように思う。
西洋ではナチュールモルトといっているが、日本では誰が翻訳したものか知らないが静物と呼び馴ら[#「馴ら」は底本では「馴らわ」]されている。まず便利な言葉であるところから近頃は日本画家の間にも通用するようになってしまった。
しかしながら以前は絵に無関係な人がたまたま展覧会など見に来て、しずかものあるいはしずものとは何ですかとよく訊くことがあった。まったく他人にはわけのわからぬ文字かも知れない。しかしもう昭和の御代では、あかの他人でも静物といえば大概あれかと合点する人でこの世は埋まって来ただろう。
「静物は林檎のことと母思い」とはこれもまた誰の作った川柳か私は知らないが、以前はまったく林檎が静物である位皆林檎を描いた時代があった。私の美学校[#「美学校」は底本では「美学」]時代などはその隆盛時代だったとみえて誰しもが申し合わせた如くまず洋画では林檎が一人前に描けたら及第だといっていた。
ところであの林檎という奴はツルツル丸々としていて、私などは一向に昔から描いてみたくな
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