く動かすだけの力を偶然にも備えるものである。
 現代では人絹《じんけん》というものがある。人絹製の帯や襟巻《えりまき》などに、上等のものよりも数等感心すべきさっぱりとした美しい柄を発見する。そして、幾百円の丸帯など見ると、全く何か、うるさい、不愉快な手数ばかりを感じてしまう事さえある。
 狩野《かのう》派末期の高貴なる細工ものよりも、師宣《もろのぶ》の版画に驚嘆すべき強さと美しさが隠されていた如き事も、世の中には常にある事だ。
 大体、日本人は、何から何まで本物でなければ承知しないくせ[#「くせ」に傍点]がある。本物もいいが極端になるとその結果、何から何まで本金づくめの本物づくめとなり、指に純金の指環《ゆびわ》、歯に本金の入れ歯を光らせ、正二十円の金貨を帯止めに光らせ、しかも、工芸的価値や模様の美しさなどは顕微鏡で覗《のぞ》いても出て来ない。
 西洋の下級な女たちの手にはめられている大げさな指環は、悉《ことごと》くこれ、ガラス玉であり、牛骨と合金で出来上っているのを見た。そしてそれが愛すべく美しい模様|唐草《からくさ》によって包まれている。私は、そのガラスの青さと、合金の金具と、その唐
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