い、つるつるの禿頭が私の前へ転《ころ》がったものだ。私は、それ以来九里丸の頭が少し怖ろしくなって、つい、いも助の方へ、なるべく賛助して歩くようになってしまった。そして同じ口上《こうじょう》を幾度でも暗記するまで、ついてあるいた。そして彼の柔かに動く頸《くび》と、細い目を観賞しながら。

 とこう書いていると、いくらでも記憶は蘇生《そせい》する。ともかくも、かかるすべてのものは悉《ことごと》く下手《げて》の味あるものばかりである。一つとして、高尚、高貴、上品なものはない。夜店のたべもの、夜店の発明品だ。香具師《やし》がいう如く、あっちにもこっちにもあるというありふれた品物ではない。買って帰るとすぐつぶれるという品でもないといっているが、即ちその品こそ持って帰るとすぐつぶれてしまう処のものであるのだ。
 しかしその、変色し、つぶれる、安い処に、愛嬌《あいきょう》と物悲しさを含んでいる。そして下手ものは安く仕上げる必要から勢い手数を極度に省く、その事が偶然にもまた、芸術の方則に合致する事があり、適当な省略法が加えられるのでその結果、高貴なるものの複雑にして鈍きものよりも、単純にして人の心を強
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