べっとりとしてその日は友人にさえも合わす顔がない気がする。
ことに女が髪結床や美粧院から出て来た時の姿位、飛び上がった感じのするものはない。彼女は何と大変な頭を捧げていることか、凝り固まった耳隠しや光輝ある日本まげを戴いて、目だけ動かしつつ電車道を横切っている。
その整然と出来上がった頭は、買いたての帽子の比ではない。しかし帽子は凹ましぐせをつければ、先ず四、五年間は愛用出来るが女の頭が本当に自分自身のものとなる頃には、再び美粧院の門をくぐらねばならぬ頃である。
すると、本当に自分自身のものである間ははなはだわずかな日数だけであろう。
ある友人は、パリのしゃれものは仕立ておろしの服を直ぐ着用して外出はしないと話したことを記憶する。それは真にさもそうかも知れない。部屋で充分自分のくせをつけてしかる後、彼女の前へ立とうとするであろう。何はともあれ結いたての髪、新調の帽子等みなことごとく相当の不調和さと嫌らしさを備えている。私はそれが何より嫌だ。
下手《げて》もの漫談
芸術家が最上の芸術を作ろうとして出来上った手数のかかった、高尚、高貴、高価な品物ではなく、ただ食事のため
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