の学生時分、人からソフトをもらったことがあった。どんな形にして被ればいいか、まだよく飲み込めていないその夜、浅草千束町の銘酒屋を観賞して廻った。その時障子の中から一人の女が、随分似合わない帽子を被っているわね、と叫んだものだ。私は、私の心の穴をえぐられた心地してびっくりしたことを今に忘れ得ない。しかしながら一目にして観破するところの随分敏感な女の神経に敬服したものだった。
その代わり被り慣れた帽子こそはわが手足でありわが顔、鼻、口である。いかにお粗末であり、汚れていても捨てるに忍びない愛着を生じる。
帽子は西洋から日本人の頭へ渡来したが、散髪もまた渡来せるものの一つであろう。帽子は頭へ戴けばそれでいいが、散髪は自分自分の毛髪をもって製造する性質のものであるから、髪そのものの質が問題になる。西洋人の髪は綿の如く軽く細く柔軟であって、ちぢれている。その髪から起こった散髪の種々なる様式である。
古来日本人の自慢とせる髪は重く、長く、硬直で黒く、房々とせるものである。したがって支那の弁髪や日本髪を結ぶにもっとも適当であった。と同時に散髪し、オールバックにし、耳隠しとし、波を与えちぢらせる
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