交際すると案外つまらないものであるかも知れないと思う。多少の歪みや欠点はあっても、千差万別の顔をことごとくそれぞれの特質をつまみ出して賞する方が私には適当している。
 しかしながら顔についての大体の好き嫌いというものが各人に存在するようである。私は鼻高過ぎてやせている狐面や長くて馬に類するものよりも、鼻低しといえども丸々として猫に類する厚ぽったい相貌を好む。ことに西洋の鷲鼻の女が怖ろしい。彼女が一尺の距離に近づくと、それは天狗とも見えてくる。私の好みは支那、日本の鼻低くして皮膚の淡黄にして滑らかなものを選ぶ。
 しかしながら低い鼻といっても、平坦にして二つの穴が黒く正面へ向かって並んでいるのは珍奇であり下等である。その他皮膚の毛穴や、鼻のつけ根や、目尻や耳の中、そのつけ根、その皺、口の周囲等に何か不潔なものが溜っていたり、その形妙にいじけて歪みたるはほんとに貧相にして不幸な心を起こさせるものである。
 私のもっとも嫌な思いをするのは日本ものの映画において女優が大写となって笑う時、何とそれはいじけてけち臭く下等に見えることであることかと思う。日本の女がフィルムの上で本当に心もちよく笑い得
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