かんしゃくを起したり、喧嘩をしたり、笑われたり、不愉快になったり、しているか知れないと思う。
ところで私自身が、私の貧しい品格を相当に保ちつつ、何かしゃべらねばならない場合において、私が嫌がっている処の大阪的な国語が、私の口から出ているのを感じて、私は全く情けなくなるのだ。自分のしゃべっている言葉を厭だと考えては次の文句はのどへつかえてしまうはずである。それでは純粋の東京流の言葉と抑揚を用いようとすると、変に芝居じみるようで私の心の底で心が笑う。全くやり切れない事である。つまらない事で私はどれ位不幸を背負っているか知れないと思う。
それで私は、私の無礼が許される程度の仲間においては、なるべく私の感情を充分気取らずに述べ得る処の、本当の大阪弁を使わしてもらうのである。すると、あらゆる私の心の親密さが全部ぞろぞろと湧《わ》き出してしまうのを感じる。
私は、新らしい大阪人がいつまでもかかる特殊にして半端な言葉を使って、情けない気兼ねをしたり、ちぐはぐな感情を吐き出して困っているのが気の毒で堪らないのである。あるいはそれほど困っていないのかも知れないが、私にはさように思えて仕方がないの
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