ちょうど実写もののフィルムを逆に回転したのである。
そこで先日飲み込んでおいた風景を尻から悉く吐き出してしまったことになって私は初めて爽快を感じた。
絵を描くことに油が乗っている時には妙に文章が書けなくなる。文章に興味を感じる時絵を描く神経は鈍る。病院にも内科外科婦人科の別ある如く、その係りがちがっているのだと思われる。
絵の仕事で夢中になっている時には人との約束や義理人情を多少踏み潰してもかなり平気でいられる。また他人も了解してうるさい用件を持ち込まない傾向もある。あんな男に頼んでも駄目だと見当をつけるのだろう。
絵を描く方の神経が鈍っている時に限って手紙が書けたり他人のことが気にかかったりする。いらない返事まで出してみたりしてみそをつけたり、いらない世話をさされたりする。よその人情が気にかかって捨てては[#「捨てては」は底本では「捨てて」]おけなくなるのだ。他人もついそれにつけ込んで来る。やはり絵描きは多少不人情に見えてもいいから、少しの隙も見せない方がいいと思う。
世話といえば他人の絵を批評したり、見てやったり、見せられたり、することは危険な仕事である。いいものは日に
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