しいことには水の不足を感じる。荒池、鷺池、猿沢池はコップにおける大切な一杯の水であると思う。
花火
人は妖気を得て涼を感じるものである。池の上や軒端を飛ぶ蛍、あるいは夏の夜の黒い空からだらりと下がって消えて行く花火に私は妙な妖気を感じる。蛍、人魂、花火はともにトロトロと流れて明滅する。彼らを私は妖怪の一族と見なしていいと思う。その他妖気を含むものは多い。例えば西瓜の看板をじっと眺めていると、何ものかの舌とも見えてくることがしばしばある。お岩や牡丹燈籠が舞台へ現れるのも夏である。夏は妖怪の世界である。
盛夏雑筆
素人が一番楽しんで絵を描くようである。訪問の新聞記者に対して実業家の夫人達は、ほんとうに私は絵筆を持っている時こそ幸福でありますという。私も中学時代の親の目の盗み描きが一番幸福で御座いましたといっていいと思う。
先夜、松林の暗闇で子供がキャラメルをばらまいてしまった。拾ってくれといったが石ころばかり手に触れて皆目拾えなかった。ちょうど近くを時々郊外電車が走るのでそのヘッドライトが照す瞬間において二、三個ずつ拾い集めた。
私は芝居のだんまりや殺しの場は
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