らあまり動く事を好まなかった国でもある。動く事をむしろ、悪徳の一つであるとさえ教わったものである。静かに静かにというのが大体の方針であったらしい。静観するという言葉がある。
もしも、西洋というものが目の前へ現れなかったら、日本人は今もなお雲助と人力車以上のものを決して望まなかったかも知れない。即ち現代に動いているものの中で日本人の要求によって製造され発明されたものは一つもないといっていい。
全く近代の日本は沈没した潜航艇の如く、ちょっとした穴からあらゆる西洋の動くものが浸入して来た、最初、自動車というものが走り出した時、かなりの人でさえも、不愉快を感じたものであった。砂埃《すなぼこり》と煙を立てて走って行く姿を見てあれは暴君だといってよく怒ったものである。風致を害するともいったものだ。しかしながら如何に静観独居を楽しむ人たちが、雑巾《ぞうきん》やぼろ切れを以て潜航艇の穴を押えつけても、大海の圧力というものは大したものである。とうとう穴の内部は動くもので充満してしまった。しかしまだまだもっと一杯になる事だろう。そして、それらの動くものどもが徳川時代に見られなかった別の新鮮な風景をつく
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