》を喜ぶし、フットボールで時を忘れ、大人《おとな》でさえもテニスや野球、ゴルフ等すべて毬の運動に興味を持つ。その点犬猫のふざけるのと大した変化はない。ただその組織や方法が多少複雑であり、勝負があったりする違いはある。
 私などは特に犬猫に近いためか子供の時から殊更《ことさ》ら動くものに興味を持っていた。
 昔の夜店《よみせ》には美しい西洋館の屋上から金色の球《たま》がころがり出し、いろいろの部屋を抜け、階段を通り、複雑な線路を縦横に走り廻って落ちて来る仕掛の露店があった。私はその多少、オランダ風の屋台店《やたいみせ》の前へ立って、その金色の球の滑《なめら》かな運動の美しさに見惚《みと》れたものである。するとそのうち、自分が球に乗り移ってしまい、自分自身がその階段を走っている気になってしまう。大体われわれは動くものには乗って見たくなるものである。
 その頃は、今の如く電車が走っている世ではなかった。動くものは人力車《じんりきしゃ》位のものだった。今の少年やモボたちが、一目してあの車はキャデラックか何者かを識別する如く、私はその頃の人力車のあらゆる形式を覚えてしまった。殊に往診用の自用車と
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