た善き友を、このように、朝夕、私のそばに持つことのできるのは、神様の恵みなのでございましょう。私は、正夫さんが私のそばにいてくれるあいだ、私たちのミットレーベンをお守り下さいませと祈りました。私はやはり、バウエルやビュルゲルたちと一緒に、町の小さな教会にまいっていますので。
 昨日《きのう》は、私の部屋に据えてある古いオルガンで、正夫さんは、ほとんど終日、ブラームスや、ベートーヴェンなどをひいてきかせてくれました。また、正夫さんが近頃書いた短篇をいくつか読ませてもらいました。朝、町から十五、六丁はなれた森のなかの沼のほとりを散歩して、ほがらかな小鳥の声をきいたり、虫のたくみな巣をウォッチしたり、そして花を摘んで帰って正夫さんの机の上のコップに插したりしましたのちに、私たちは人生や芸術や宗教や、すべて私たちの、たましいの純なる願いとかなしみについて、互いに訴えたり、はげんだりしました。そして二人が今幸福であるがゆえに、私たち以外の人々の幸福についての、心づかいなどもしました。そしてやはり、人と人とのあいだの自由、自分の幸福を願うことが同時に他人の幸福になるような、メンシュリッヘ、フライハ
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