、そしてその手紙はあなたにも見ていただくように申しておきましたが、私は一つの信仰の問題、また一つは性の問題のために心が安らかでありません。私はけっして証拠がなくては信じないというのではなく、旧約聖書に現われる神の意志によきものとして受け取りがたいところが多いのと、キリストの言行にまだ私の道徳的懐疑が残るために、キリスト教に対する私の信仰が動揺いたします。すなわち私は、エホバとキリストとの言行が最深の真理を含むがゆえにのみ、キリストを信じたいのですが、聖書に現わるるところでは私はまだ少ししか信ずることができません。私はヨハネが「われその栄えを見るにまことに神の子として……」といってるのに注意します。ヨハネをしてキリストを神の子と信ぜしめたのは、イエスの現わした栄でありました。私もそれに似た心持ちで、イエスの言行の最深の真理を含めるのを見てイエスを信じたい。そのほかには何の証拠も求めたいとは思いません。しかし私はまだそれを疑います。イエスの言行はまだ相対的のように思われるところがあります。ことにエホバの言行は、私にしばしば失望と懐疑とを生じさせます。私はかかる考えを起こすには、すなわち主を
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