でありません。許して下さい。私はもっと心を強くして周囲に支配されぬようにならねばいけません。トマスの「百合の谷」を送って下さいませんか。お天気になれば妹と写真を撮って送りますつもりです。
[#地から2字上げ](久保謙氏宛 四月二十七日朝。別府より)

   静かな、知性ある友情の慰め

 あなたからのかずかずのやさしいすぐれた手紙や、小包み、雑誌などはみな残らずたしかに落手いたしています。そしてそのたびごとにあなたの熱い真心を深い感謝と、そしてときには涙をこぼしてのよろこびをもって受け取りました。あなたは私の長い沈黙にさぞさぞ物足りなくお感じなされたことでしょう。そしてあなたが私に何かシュルドを作ってるのではなかろうかとさえお考えなされましたと聞き私は胸を打たれました。私はもったいなく感じます。なにとぞ私を許して下さいまし。私は心が混乱しているためと発熱して少しく不快であったのと、来客をもてなすためなどでこのように永い御無沙汰をしてしまいました。私は心が乱れて手紙がかけないので、しばらく妹とも別れて二、三日淋しい山のなかの温泉へ行って心をまとめて手紙をかくつもりでした。そして出発しよう
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